花粉症を改善するためには

スギ花粉症を例に原因因子別に解説していきましょう。

1. 暴露の過剰への対策

まず、暴露しないことです。スギ花粉のない地域に住めば、完璧です。しかし、そもそも「スギ花粉症になった。」という事実は、バリアー障害や寛容誘導の不全という因子をもっている可能性があるので、いつなんぞやの抗原に暴露してしまったら、それのアレルギーになってしまう可能性をはらんでいます。是非、ハワイに移住するからといって、投げ出さず、すべての対策をされることが、アレルギーのない人生へのステップです。スギのない地域に移れないかたは、スギ花粉への暴露をへらしましょう。1日の半分近くは、自宅で睡眠をとっていますので、家の中にスギ花粉が侵入しない:外気導入法に工夫、衣類で持ち込まない工夫、空気清浄機、そして、外出時はマスク、そして、飛散の多い時間帯の外出をさけられるなら避ける。そして、帰宅後はシャワーやうがいをする。いわば、日本人が情報としてもっている事で暴露を減らします。

2.バリアーの障害への対策

比較的穴場の対策になります。穴場な理由は、効果をすぐに体感しにくいためです。でも、暴露のコントロールと寛容の誘導が、かなりしっかりやっても、もう一歩というのは、バリアーの障害である可能性が高いと考えています。

原因としては、

1>「バリアー障害スギ花粉が侵入してくる気道の粘膜面を維持する上皮細胞の異常」が、まず上げられます。対策としては、細胞の新陳代謝に必要な栄養素が適切に摂取されているか?ということになります。不足しがちな栄養素を具体的に挙げると、細胞を構成するタンパク質、タンパク質合成に必須な亜鉛、細胞分裂に必要なエネルギー生成のためのビタミンB群、新陳代謝のシグナルに関与するビタミンA、ビタミンDなどが重要で、また、上皮細胞を下支えする皮下組織はコラーゲンというタンパク質によりなり、しなやかな機能をもったコラーゲンの立体構造にするためにはタンパク質とビタミンCと鉄が必要です。

そして、

2>正常な上皮細胞が粘膜機能を維持するためには、まず「脱水」は粘液分泌を低下させます。そいて空気の乾燥も同様で、また、異物を排除する繊毛の動きを阻害します(実は、これは風邪対策でもあります)。栄養もやった。水分摂取もやった。加湿器も買った。実は、もう一つバリアを損なう大きな原因があります。大気汚染物質です。例えば、ディーゼル排気微粒子に含まれるキノン化合物は、悪玉活性酸素のヒドロキシラジカルを発生させて、上皮を傷害します。

3.寛容誘導の不全への対策

この寛容にはルールがあり、

1)ビタミンAやビタミンDがちゃんとあること
2)オメガ3とオメガ6の脂肪酸のバランスが保たれていること
3)抗原の侵入経路がイレギュラーでないこと
4)腸内フローラと外的環境が健全なこと

それぞれ解説していきます。先の暴露過剰対策とバリアー障害対策は「抗原をいかに侵入させないか?」という部分でした。これから述べる寛容誘導の不全対策は「抗原が侵入した時にカラダの中でどうなる?どうする?」という部分です。4つの要素を上げていますが、実はそれぞれ1冊の本がかけるくらいの背景があるのと、とても盛んに研究がされていている分野で、さらなる知見が追加されていくと思います。マスク以外で花粉症対策として流行の乳酸菌やヨーグルトや赤シソエキスなどは実はここなんです。

1)ビタミンAやビタミンDがちゃんとあること
「ビタミンD欠乏で花粉症になる。」という事。実は約10年前に私ドクター斎藤が発見した(おそらく)事なんですが、スギ花粉症は日本独自のものなので、海外で研究している人がいないということが大きかったと思いますが、ちょうどスギ花粉症の時期にビタミンDの研究者が推奨するビタミンDの量(4000IU)を摂取したら、なんと1時間もしないうちに、鼻が抜けてきて「なんだこれは?」となったのがキッカケです。私はスギ花粉症+通年性の鼻閉(鼻ずまり)だったのですが、以後、鼻にストローを通したような鼻通りです。

もう少し、エピソード(自慢話)をしますと、ビタミンDの推奨量に関してですが、欧米のビタミンD研究者は1日あたり2000(50μg)から4000IU(100μg)の摂取が必要と考えていますが、日本の厚生労働省が定めた食事摂取基準では220IU(5.5μg)です!

なんでしょうこの開きは?

理由は2つ。1つは、ビタミンDはカルシウムの吸収を調整することは昔からわかっていて、骨粗鬆症の薬に活性型ビタミンD製剤があるくらいでとても研究されていたのですが、ビタミンDが実は免疫調整作用があること、特に、免疫寛容の立役者である制御系T細胞と呼ばれるTreg(ティーレグ)という免疫細胞の発現や機能に大変重要な役割を果たしていることは1980年代以降と、比較的最近わかってきたこと。結論をいうと、国の基準は、ビタミンDの免疫調整作用を考慮されていないのです。このことをビタミンD研究の重鎮中の重鎮に、その事を申し添えて私が書いたビタミンDの本を差し上げたら、後日、「目からウロコ」でしたとお礼のお手紙をいただきました。(自慢です)免疫寛容の誘導には、ビタミンDを1日あたり2000(50μg)から4000IU(100μg)摂取する必要があるのです。

もう一つの理由は、厚生労働省が定めた「食事」摂取基準だということです。「食事」です。「栄養」摂取基準じゃないのです。ビタミンDは名前こそビタミンですが、ビタミンの定義「体内で合成できない摂取するのが必須(バイタル)な栄養素」には該当しない、コレステロールから皮膚で合成されるホルモンの様な物質です。ではなぜ、欠乏するのか?合成するために紫外線のUVBを浴びないと合成されないのです。紫外線あたってますか?日本人の4割がビタミンD欠乏であるというデータがあります。また、残念なことに、ビタミンDは食材にはほとんど含まれていませんから、「食事」摂取基準において、そもそも食事から摂取出来ない栄養素の推奨摂取量を高く設定しても、国民の多くがそれを達成出来ず心配してしまうでしょう。食事摂取基準を設定している担当者の方は、とても苦慮されているようです。国内外の温度差を察してか、2015年の改訂には、耐用摂取上限(副作用が起こらないであろう摂取上限量)を2000(50μg)から4000IU(100μg)に引き上げてくれました。

私ごとですが、日本製で初めて高単位のビタミンDサプリメントを作りました。その後、ビタミンDにビタミンAも加えたサプリメントも作りました。このサプリメントの開発秘話をからめて寛容誘導にビタミンAも必要な理由を解説します。

ビタミンDを1日4000IU(100μg)摂取していたある日のこと、雨の日の夕方にクルマを運転していたら、やたらに、道がギラギラして見えにくいことに気づき、そういえば、いつもに増して結構ドライアイ。あれ、これはビタミンA欠乏の夜盲症とドライアイではないの?と思い、ビタミンAを摂取したら速やかに症状はなくなり、なるほど、よく考えたら細胞の核のなかの受容体(信号をうけとるところ)をビタミンDとビタミンAは共有していて、ビタミンDばかりが増えて、ビタミンAのシグナルが入りにくくなったのでは?と考えました。ビタミンDとビタミンAは一緒に摂った方がいい、と考えビタミンDにビタミンAも加えたサプリメントを作りました。

しかし、その後にもう一回このサプリメントは生まれ変わるエピソードがあるのです。ある日、こんな患者さんがいました。食べものによる蕁麻疹でアレルギーの名医を10件以上渡り歩いてきた女性。驚いたことに「ステロイド剤にアレルギーがあるです」と、それを聞いたアレルギーの名医には「ステロイド剤にアレルギーあるわけ無いだろうが?」ことごとく逆ギレされて、ドクターショッピングのすえ流れついたのが斎藤。「火のない所に煙は立たぬ」何事にも必ず原因があるというのが機能性医学の原則ですから、薬を錠剤にするときの成分が原因ではないか?と考えたのです。彼女は、食べたもの多くに免疫反応を起こすことが血液検査でわかったので、寛容誘導治療が必須と考えましたが、錠剤やカプセルはリスクがあったので、アメリカのビタミンDのリキッドを使うことにしました。リキッドでもアレルギーが起こらない保証はないので、恐る恐る飲んでもらいました。すると1時間くらいで、顔やカラダの赤みかゆみとともに消えていったことをいまでも覚えています。

打錠やカプセルをつくる際によく使われる「ステアリン酸カルシウム」がアレルギーを起こすことは、一部のアレルギー専門皮膚科医の中では有名であることが判明。そこで、私が作ったサプリメントもステアリン酸カルシウムフリーにしました。また、寛容誘導にビタミンDにビタミンAを加えるのは、相対的なビタミンA欠乏を回避するだけではありません。寛容誘導システムの中で経口免疫寛容というのがあります。「口から食べた物にはアレルギーを起こさないようにする」というシステムです。実は、口の周りのリンパ組織扁桃で食べ物の抗原を認識学習した樹状細胞という免疫細胞が、腸に移動してその抗原にたして腸で反応しないように「寛容を誘導」するのですが、この腸への移動(ホーミング)に必須な栄養素がビタミンAでした。また、ビタミンD同様に、寛容系のT細胞を増やす役割も持っています。寛容誘導にはビタミンAとビタミンDは欠かせないのです。スギ花粉症で免疫寛容を応用した舌下免疫療法をはじめられた方も、治療の成功率をあげるために、是非ご留意ください。

蛇足ですが、ビタミンAは、通常は、野菜のβカロテンから体内で合成できますので、野菜をとっていればビタミンA欠乏になりませんが、実は、βカロテンからビタミンAを変換することが出来ない人、苦手な人がいまして、そのような方は、レバーなどからビタミンAそのものを摂取しないと欠乏になってしまいます。日頃、ドライアイや夜盲症の症状があるかたは、ビタミンAの欠乏を考慮する必要があるかもしれません。指のササクレ、かかとの肥厚、白ニキビなどもビタミンA欠乏の症状です。寛容の誘導に問題がある場合はまず、ビタミンD欠乏を疑いましょう。免疫調整を目的とした場合、ビタミンDは1日あたり2000(50μg)から4000IU(100μg)摂取しましょう。

2)オメガ3とオメガ6の脂肪酸のバランスが保たれていること
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、生物では合成ができないので、食べものから摂取します。オメガ3脂肪酸は、アブラナ科のアマニやエゴマに含まれるαリノレン酸、EPA、DHAなどは魚油に豊富です。オメガ6脂肪酸は植物油におもに含まれます。元々、人類はオメガ3と6の摂取バランスは1対1だったと考えられていますが、今日では食の工業化によって、オメガ6脂肪酸過多になっています。カラダは、それら2系統の脂肪酸を原料に、エイコサノイドというメッセージ物質をつくります。オメガ6系は主にロイコトリエンB4などの4系の炎症を促進する物質になり、オメガ3系はロイコトリエンB5などの5系の炎症を抑制する物質になります。オメガ3系が欠乏し、オメガ3と6のバランスが崩れると、自動的に炎症がちなカラダになっていきます。すなわち、同量の同じ抗原の侵入(暴露)によって起こされるアレルギー反応も、体内のオメガ3と6のバランスによって、炎症規模がかわってくるということです。オメガ6とのバランスも考慮しながら、オメガ3脂肪酸は1日2g以上摂取しましょう。

3)抗原の侵入経路がイレギュラーでないこと
以前、小麦の成分を含む石鹸が、小麦アレルギーの原因となり、消費者問題になった事があります。「食べものにはアレルギーを起こさないようにしよう!」というシステムがカラダにはあります。経口免疫寛容と呼びます。口の周りのリンパ組織扁桃で食べ物の抗原を認識学習した樹状細胞という免疫細胞が、腸に移動してその抗原にたして腸で反応しないように「寛容を誘導」するのですが、この寛容誘導システムは「経口」限定です。口から食べたのであれば、小麦に対してアレルギーを起こさないように出来ていますが、口からではなく、皮膚から入ってきたらこれは別問題。アレルギーを誘導します。無論、感作させるためには、カラダが寄生虫と勘違いするような、抗原の量、種類、回数も重要になってきます。いずれにせよ、口から入ってくる食物に特別に用意された寛容システムが経口免疫寛容で、侵入経路が口以外であれば、アレルギーは待ったなしです。しかし、皮膚は粘膜に比べ、頑丈に出来ていますので、そう簡単に抗原侵入を許しませんが、近年「幼児の食物アレルギーは、口周りの肌荒れによって、抗原侵入が起こり起こってくる。幼児の皮膚保湿は食物アレルギーリスクの軽減につながる。」ことがわかっています。乾燥によってバリアー機能が下がった皮膚はアレルギーの原因になりますので、適切に保湿しましょう。また、食習慣のあるタンパク質を含む原料をつかったものを皮膚に塗ったりすることは新潮にしましょう。

4)腸内フローラと外的環境が健全なこと、
免疫反応の司令塔、樹状細胞があります抗原提示細胞ともよばれ、組織周囲に存在する外的な細胞や物質をサンプリングして、その情報に即した免疫状態を誘導します。例えば、腸管付近の樹状細胞は、腸管内に存在する腸内フローラの死骸の欠片(LPS:リポポリサッカライド)をサンプリングして、腸中フローラの悪玉菌や善玉菌の生息をモニタリングします。「善玉菌優位で、病原菌もいいならば、平和であると判断し、腸管周囲の免疫は『寛容モード』にします。」乳酸菌やヨーグルトに抗花粉症効果があるのは、この部分に働きかけているのですが、「効果がなんとなく」な理由はなんとなく理解していただけるかと思います。そのサンプリングが「悪玉優位で、病原菌もうじゃうじゃ、戦争状態であると判断したら、腸管周囲の免疫は『炎症モード』でアレルギーに促進的になります。」腸内フローラ(腸内環境)は、体内の「寛容誘導の要」所である。ということです。また、腸を隔てる腸管のバリア機能も同じく重要で、バリア機能の破綻があれば、食物抗原自体が腸管バリアを超えて侵入して炎症を生じますので、免疫寛容において、腸内フローラと腸管バリアはあわせてケアする必要があるのです。
そして、もう一つ。「外的環境の健全」とはどういうことでしょうか?
「バリアの障害への対策」で大気汚染物質のディーゼル排気微粒子に含まれるキノン化合物をあげました。悪玉活性酸素のヒドロキシラジカルを発生させて、上皮細胞を傷害しバリア機能を障害し抗原侵入を許してしまいます。大気汚染物質は、上皮細胞を障害するだけではありませんでした、ディーゼル排気微粒子、黄砂付着物質、PM2.5に含まれる工場由来の金属成分は、抗原提示細胞を活性化させることで『寛容モード』から『炎症モード』にシフトさせ、アレルギー反応や炎症反応を悪化させる。赤シソエキスには、その病態にともなう炎症メッセンジャーの上昇を抑制することがわかっています。大気汚染物質に極力暴露しないことは「寛容な状態」を維持するために最も重要です。「腸内フローラと外的環境が健全なこと」は、抗原提示細胞が行う環境サンプリングで刺激されることなく、「寛容な状態」を維持するため大変重要です。抗原提示細胞が刺激されるような物質をサンプリングしてしまうことは、食生活や生活環境の悪化が著しい今日においては、ビタミンD欠乏とならんで、「免疫寛容誘導不全」すなわちアレルギー体質を獲得してしまう原因となっています。

<まとめ>
物事には優先順位があります。
花粉症などアレルギー性鼻炎をもっていらっしゃる方においては、
すでに、マスクや住環境の抗原除去を行っているでしょうから、

1> 寛容の誘導のためにビタミンDをとりましょう。
2> 炎症反応をブロックするために水素をとりましょう。
3> バリア対策にタンパク質と亜鉛と鉄をとりましょう。
4> 腸内フローラと腸管バリアを整えましょう。
5> オメガ3脂肪酸をとりましょう。(アマニオイルを1日2g)

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