今年も花粉症の季節到来です

さて、今年も花粉症の季節がやってきました。

植林政策によってスギの木がたくさん植えられたことで、春の時期になるとスギの花粉が大量に飛散し、それに対するアレルギーをもつ方が増加し、国民病の一つとなってしまいました。スギがこれほど多い国土は他になく、実はスギ花粉症は日本だけなんです。

花粉症はなぜ起こる?アレルギ−本来の役割

花粉症はスギ花粉に対するアレルギーですが、アレルギーはなんでおこるのか?

通常病院でアレルギー検査をすると「あ〜斎藤さん、スギ花粉にたいするIgE抗体が高いですよ〜、スギ花粉アレルギーですね〜」となります。IgEは免疫グロブリンEと呼ぶのですが、そもそもこの免疫反応系は「寄生虫の排除」を目的に備わったといわれています。

侵入してきて外敵が細菌などの小さい細胞であれば、白血球が食べてくれます。虫が体内に入ってきたらどうしますか?
敵はデカすぎて白血球は食べられません。例えば、虫が鼻の中に侵入してきたら、どうしますか?「鼻水をいっぱい出して動きを封じ」「鼻の粘膜を膨張させてさらなる奥への侵入を防ぎ」「ヘックションとやって鼻の外にでるようにします」

あれ?

これはまさに「花粉症の症状」です。

寄生虫を追い出すように「組織的な排除」を行うシステムの発動役が「IgE」で、ひとたび寄生虫の抗原を感知すればスイッチONになるのです。スギ花粉は寄生虫ですか? いいえ。違いますが、カラダはスギ花粉のオバケのような寄生虫をイメージしているのかもしれません。なぜなら、大量のスギ花粉にその人は暴露してしまったので、想定する敵は大きい!であれば寄生虫対策のIgEの免疫チームを発動させたのです。

アレルギーになぜなるのか?(スギ花粉アレルギーを中心に)

アレルギーを担うIgEは「寄生虫を組織的に排除するシステムを担う」と説明しました。抗原がたくさん暴露する。または、それに準じた出来事があってアレルギーは形成されます。ヒトを含め生物はよく出来ているはずです。しかし何かがおかしくて、自身に備わった免疫システムによって悩まされてしまうのでしょうか?原因因子としては3つあります。それは同時に、予防改善法は大きく3つあるということです。

1.暴露の過剰
2.バリアーの障害
3.寛容誘導の不全

それぞれの説明をしましょう。

1.暴露の過剰
スギ花粉に例えれば、カラダが勘違いするほど大量にスギ花粉が気道や目の粘膜に張り付いたことで、アレルギー担当のIgE系の免疫システムが発動したのです。

2.バリアーの障害
粘膜は粘液に覆われて、花粉などの抗原はそう簡単に粘膜に到達しません。ホコリもそうですが、粘膜上皮細胞という粘膜を構成する細胞は粘液を分泌し、また、繊毛という箒(ほうき)を持った細胞によって、ホコリをタンとして胃に流し込み、胃酸で処理します。しかし、栄養欠乏、乾燥、脱水、化学物質(排気ガス、大気汚染)などによって、上皮細胞の機能が障害されたらどうなるでしょうか?花粉などの抗原は容易に粘膜まで到達し、粘膜周囲を警戒している抗原提示細胞に認識されやすくなります。

3.寛容誘導の不全
免疫反応(抗原抗体反応)は、抗原を見つければすみやかにドンパチ(炎症反応)をやるように出来ているか?といえば、必ずしもそうではありません。平素は、免疫反応のいわば「ブレーキ役が機能していて、文字通り免疫反応に「寛容」な状態がしかれているのです。

この寛容にはルールがあり、
(1)ビタミンAやビタミンDがちゃんとあること
(2)オメガ3とオメガ6の脂肪酸のバランスが保たれていること
(3)抗原の侵入経路がイレギュラーでないこと
(4)腸内フローラと外的環境が健全なこと

の4つのルールがあり、それらのルールを破ると「寛容状態」が破綻し「炎症モード」になります。

保険診療での治療アプローチ昨今

私が治療に使っていく考えかたとして、採用している機能性医学はいわば、病気の根本原因を治療する、病態治療ともよべますが、これらの原因をすべて考慮して治療対策を行うのです。

一方、今日主流の医学では、つい最近までは「抗アレルギー剤」によって「炎症反応を抑え込む」対症療法的な治療が主流でしたが、上述の寛容に着目した治療「舌下免疫療法」として保険適応が認められるようになりました。

「経口免疫寛容」という「食べたものにはアレルギーを起こさないようにしよう」というメカニズムが備わっています。食べ物は、エネルギー源です、たくさん食べるので、腸は多くの食物由来の抗原にさらされますが、これらに、一生懸命排除しようと、炎症反応を起こしていたら、栄養を取り込めなくて生きていけません。

そこで、どうしたか?というと、口を経由して食べたものの抗原を口の周りのリンパ組織の扁桃などで、樹状細胞という抗原を認識する細胞に認識させて、その抗原を認識した樹状細胞を腸管に移動させて(ホーミングと呼ぶ)、いざ食べたものが腸にさしかかった時に、攻撃しないように「寛容を誘導」するのです。

「舌下免疫療法」とは、まさに、この「経口免疫寛容誘導」を応用し、花粉の抗原を舌下に置くことで、扁桃など口の周りのリンパ組織が花粉の抗原を「口から入ってきたので食べ物ですね?」と勘違いさせて、「寛容を誘導させてしまう」という、カラダをだます治療です。確かに「抗アレルギー剤」抑え込む対症療法ではないですが、根本治療とはいえないかもしれません。病態に即して治療してはいるので、病態治療ではあると思います。

また、「経口免疫寛容」はよく出来たシステムですが、この寛容にはルールがあり、

1)ビタミンAやビタミンDがちゃんとあること
2)オメガ3とオメガ6の脂肪酸のバランスが保たれていること
3)抗原の侵入経路がイレギュラーでないこと
4)腸内フローラと外的環境が健全なこと

これらが満たされていないと、寛容のシステムが上手くいきません。
「舌下免疫療法」が一定の人に効果がない(2シーズンの治療で15%が効果なし)という事実は、上記ルールを見過ごしているからという可能性があります。